乗馬の「巻乗り(まきのり)」とは?特徴や輪乗りとの違い・コツを解説

巻乗り(まきのり)とは?(概要)

巻乗り(まきのり)とは、乗馬や馬場馬術において馬を直径6メートルから10メートル程度の小さな円を描くように回転・旋回させる「図形運動」のひとつです。英語やフランス語の馬術用語では「ヴォルト(Volte)」と呼ばれます。

乗馬レッスンでよく行われる直径20メートルほどの大きな円運動は「輪乗り(サークル)」と呼ばれ、それよりも一回りから二回り小さく回る運動が「巻乗り」です。馬の体を内側に正しく曲げ(内方姿勢)、バランスを崩さずに小さな円を描く必要があるため、ライダーの正確な扶助(指示)と馬の柔軟性が求められる重要な基本運動です。

巻乗り(まきのり)の歴史と背景

巻乗りの起源は、ヨーロッパの古典馬術(クラシカル・ドレッサージュ)や軍馬の調教技術にあります。戦場において騎兵が狭いスペースで素早く方向転換し、敵の攻撃をかわしたり有利な体勢を整えたりするためには、馬がしなやかに、かつ瞬時に小回りできる能力が不可欠でした。

16〜18世紀にかけてヨーロッパ各地の王立馬術学校で馬術理論が体系化される中で、馬の背中や後肢を柔軟にし、従順さを高めるための優れたトレーニング法として「巻乗り(ヴォルト)」が確立されました。近代の馬場馬術競技においても、馬の収縮(後肢に体重を乗せてコンパクトに動くこと)や柔軟性を審査する重要な課目として受け継がれています。

巻乗り(まきのり)の3つの特徴

巻乗りには、他の運動と区別される明確な特徴と調教上の役割があります。代表的な3つの特徴を見ていきましょう。

  • 特徴1:直径10メートル以下のコンパクトな円を描く
    巻乗りの最大の特徴は、その円の小ささです。一般的に乗馬では直径10メートル、馬場馬術の上級クラスでは直径8メートルや6メートルの巻乗りが行われます。旋回半径が小さいため、馬が遠心力に負けずにバランスを保つ高度なコントロールが求められます。
  • 特徴2:馬体の「屈曲(ベンド)」と後肢の踏み込みを促す
    小さな円をきれいに回るためには、馬の頭から尾までが円弧に沿って均等にカーブする「内方姿勢(屈曲)」が必要です。この姿勢をとることで、馬の内側の後肢が体の下深くに踏み込み、腰や後肢の筋力・柔軟性を効果的に鍛えることができます。
  • 特徴3:ライダーの繊細かつ総合的な扶助が求められる
    手綱を引っ張るだけではきれいな巻乗りはできません。曲がりたい方向へ導く「内方手綱」、馬の肩が外へ逃げるのを防ぐ「外方手綱」、推進と姿勢を保つ「両脚」、そしてバランスを支える「体重移動(騎座)」を調和させる必要があり、ライダーの技術向上に最適な運動です。

巻乗り(まきのり)に関連する豆知識・注意点

初心者が巻乗りを行う際、最も陥りやすい失敗が「バイクのように内側へ倒れ込んでしまうこと」です。内側へ傾くと馬のバランスが崩れ、円が潰れて卵型になったり、馬が内側に切れ込んだりしてしまいます。曲がるときこそ外側の手綱(外方手綱)をしっかり支え、上体をまっすぐに保つことが美しい巻乗りを成功させるコツです。

また、巻乗りは馬にとっても関節や筋肉に負荷がかかる運動です。準備運動が不十分な状態や、いきなり速歩・駈歩で小さな巻乗りを要求すると馬を痛めてしまう原因になります。まずは常歩(なみあし)で正確な10メートルの円を描く練習から始め、徐々にペースを上げていくのが上達への近道です。

まとめ

巻乗り(まきのり)は、直径10メートル以下の小さな円を描く乗馬の基本図形運動であり、馬の柔軟性とライダーの扶助技術を高めるために欠かせないトレーニングです。輪乗りとの違いや正確な内方姿勢のメカニズムを理解し、愛馬と呼吸を合わせたスムーズな巻乗りを目指しましょう。

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