乗馬の基本「手前を変える」とは?意味や方法、重要性をプロが解説
手前を変えるとは?(概要)
乗馬を始めると、レッスンの中で「手前(てまえ)」という言葉をよく耳にするようになります。「手前を変える」とは、馬が走る際(特に駈歩=かけあし)に、軸となる脚(左右)をスイッチする技術のことです。馬はカーブを曲がる際、曲がる方向の内側の脚を前に出して走ると、スムーズにバランスを保つことができます。左回りのときは左前脚が前に出る「左手前(ひだりてまえ)」、右回りのときは右前脚が前に出る「右手前(みぎてまえ)」で走るのが自然です。つまり「手前を変える」とは、進行方向やコースに合わせて馬の左右の脚の役割を入れ替え、スムーズに走り方を切り替えることを指します。
手前を変えるの歴史と背景
馬が「手前を変える」という技術や概念は、馬が人間のパートナーとして戦場を駆け巡っていた軍馬の時代にまで遡ります。戦場では、急な方向転換や障害物を避けるための機敏な動きが常に求められました。もし同じ手前(同じ脚を前に出す走り方)だけで走り続けると、特定の脚だけに大きな負担がかかり、馬はすぐに疲労してしまいます。また、急カーブで手前が合っていないと、遠心力に耐えきれず転倒してしまうリスクもありました。そのため、騎手の指示一つで瞬時に手前を切り替える技術が開発され、現代の馬術競技や乗馬レッスンの基礎技術として受け継がれています。競馬においても、最後の直線で馬の疲労を軽減し、ラストスパートをかけるために手前を変える姿がよく見られます。
手前を変えるの3つの特徴
「手前を変える」という技術には、乗馬の上達において欠かせない3つの重要な特徴があります。
- 特徴1:馬の体のバランスを保ち、転倒を防ぐ
カーブを曲がる際、進行方向の内側の脚が前に出ることで、馬は遠心力に対抗してバランスを保ちます。右回りなのに左手前で走る状態は「反対駈歩(はんたいかけあし)」と呼び、訓練された馬以外はバランスを崩しやすく危険です。適切なタイミングで手前を変えることは、安全な乗馬の基本です。 - 特徴2:馬の疲労を軽減し、怪我を予防する
人間が利き足ばかりを使うと疲れるように、馬も同じ手前だけで走り続けると、片側の脚や関節に大きな負担がかかります。手前を適度に変えることで、左右の筋肉をバランスよく使い、怪我の防止やスタミナの温存につながります。 - 特徴3:スムーズな移行には騎手の明確な合図(扶助)が必要
馬が勝手に手前を変えることもありますが、基本的には騎手が脚(きゃく)や体重移動、手綱による「扶助(ふじょ)」と呼ばれる合図を送って行います。スピードを落とさずに空中で手前を切り替える「踏歩変換(とうほへんかん)」は、人馬の高度な信頼関係と技術の結晶です。
手前を変えるに関連する豆知識・注意点
ここで、初心者の方が覚えておくと役立つ豆知識と、実践時の注意点を紹介します。
まず豆知識として、馬にも人間と同じように「利き脚」が存在します。右利き(右手前が得意)な馬や、左利き(左手前が得意)な馬がおり、苦手な手前の運動時には、走りづらそうにしたり合図に抵抗を示したりすることがあります。愛馬の個性を理解してアプローチすることが上達への近道です。
また、騎乗時の注意点として「焦って合図を送りすぎないこと」が挙げられます。馬のリズムが整っていない状態で無理に手前を変えようとすると、馬が混乱して脚を痛める原因になります。必ず馬が落ち着いて一定のリズムで走っているかを確認し、コーナーの手前などから準備を整えて丁寧に行いましょう。
まとめ
「手前を変える」とは、馬のバランスを保ち、疲労や怪我を防ぎながらスムーズに旋回するための重要な乗馬技術です。馬の脚の動きを理解し、適切なタイミングでクリアな合図を送れるようになることが、人馬一体の美しいライディングへの第一歩となります。レッスンの際は愛馬のリズムを感じ取りながら、優しくリードしてあげましょう。

